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複合表現展覧会


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複合表現展覧会について

 生物多様性と同様に、表現の多様性はとても大切な事柄なのではないでしょうか・・・
 テクノロジーの発展とともに、表現のための様々な要素の融合が可能になった昨今、複合的な芸術表現が多様な形で行われています。
 ここでは、複合芸術表現により開催した展覧会、< ナテューラ > - 混沌とした時間(とき)を持つ空間(そら)に音を描く - を題材として、展示した4作品に付いての解説を主に、複合表現手法の一端を記しています。

展覧会の概要

 自然と人の関係性を複合的に表現した展覧会で、スタイルの異なるインスタレーション4作品により構成されています。
 全ての作品が音楽・音を伴う作品のため、それぞれの作品は同時に音を発するのではなく、使用される全てのコンピュータがネットワーク上から、マスターコンピュータによりコントロールされ、第1章から第4章までの作品が順次上演されます。
 そもそも、作者自身が作曲を主体とする音楽系表現者であり、舞台作品の創作がベースにあるため、この展覧会では上演と言う言葉が妥当であろうと考えて使用しています。

展示作品

展覧会全体のタイトル

「ナトゥーラ」
 混沌とした時間(とき)を持つ空間(そら)に音を描く
第一章 :「透明だった時間(とき)を回顧するための譚詩曲(うた)」
環境省レッドリストを使用した、多チャンネル音響インスタレーション

 木の根を核として、ハイブリッド生物の様なフォルムを持つオブジェクトに、スピーカーとイヤホンのためのケーブルが、まるで血管のように絡みつく。それぞれのスピーカーとイヤホンは、環境省レッドリストに載ってしまった絶滅危惧種の名前を叫ぶインスタレーション。
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第二章 :「宇宙(そら)より来たる微細(ちいさ)な者達への賛歌(うた)」

スーパーカミオカンデで捕捉したニュートリノのデータを可聴化した作品

 キューブ上のパイプに半透明のテープを巻いたオブジェクトをスクリーンとして、映像を投影、8チャンネルオーディオと融合させた作品で、スーパーカミオカンデの増倍管が捕捉したデータを可視化・可聴化している。
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第三章 :「生物に憧憬(あこがれ)の念を抱く者達の騒がしき舞曲(うた)」
機械式音具楽団による、株価チャートを活用した楽曲の演奏

 単管を使って構築した構造体に、ドラム缶、スネア・ドラム、タンバリン、木の板等を取付け、アクチュエータにより叩く方法で物理的な音響で音楽を奏でる作品。人が作り出して来た社会システムやテクノロジーに付いて、今一度見つめ直してみようとの意味合いも持ち、無造作に置かれたディスプレイには、AIの名前が表示される。
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第四章 :「暖かい空間(そら)に白い虫が舞う時間(とき)を想う牧歌(うた)」
2017年の日本各地の気象データを可聴化したハイブリッド・アート

 8チャンネルオーディオ、4面のスクリーンに投影される映像、LEDを使用して温度計をイメージしたオブジェクト、疑似ホログラムによる映像等を複合的に融合させ、気象データを可聴化・可視化した作品です。
 手法的には、極めてオーソドックスな表現であり、来場された音楽家の方々は、この作品が一番楽しめた様です。
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技術的解説

< マスター >
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 マスターとして全体を統括するコンピュータが入口付近に用意され、ネットワークを介してそれぞれのコンピュータにコマンドを送ります。同時に、来館者に対するインフォメーションを提供し、現在上演中の作品名や展示場所等を表示しています。
 MIDIでも使われているような、アクティブセンシングを常に送信して、各スレーブとの通信が、アクティブ状態であるかを確認出来るような仕組みも組み込まれています。
 また、ディスプレイ上にQRコードを表示して、各作品に付いての情報を、スマートホンで見られるようにしてあります。
(実際に使用した解説ページは、こちらです。)
< 第一章 >
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 オブジェクトの中心となる木の根は、熱湯処理や燻蒸等の後、3週間程掛けて、削ったり、磨いたりして、最後にニスで塗装しました。ホーン・スピーカーは赤と黄のペンキで、小型スピーカーは黒で塗装し、全体的なバランスを整えました。
 スピーカーとの結線は、血管のようなイメージを持たせるために、赤と黒のコードを使用し、両端に圧着端子のコネクタを取り付けました。
 多チャンネルのため、多くのアンプが必要ですから、アンプ制作キットを利用して多チャンネルを実現しています。
 絶滅危惧種の名前は、レッドリストを一度Excel上に取り込んだ後でテキストに変換して、各スピーカーからランダムに読み上げる状態となるよう、バッチファイルやMaxMSPでPatchを組んで仕上げました。
< 第二章 >
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  映像と音響は、スーパーカミオカンデのデータから可視化及び可聴化を行っている。
  音楽はピアノの音をエディットして構成し、全曲の中で数回の可聴化サウンドを鳴らす。 映像との同期は、オーディオ側のコンピュータをマスターとして、映像側パソコンにコマンドを送って同期を実現している。
  8チャンネル音響の音の定位は、マウスやジョイスティックを操作して入力するためのMaxMSP用Patchを組んだ。
< 第三章 >
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 アクチュエータとしてACソレノイドを使用し、照明用のDMXでコントロールしている。一般的なDMX用インターフェースでは音楽的なリズムを作り出せる程の速さが実現出来ないため、Arduinoと専用のDMXシールドを使用して、MaxMSPからシリアルでコントロールする方法を選択した。
 しかし、Arduinoのシリアルポートのバッファは大変小さく、頻繁にオーバーフローが起こるため、コンパイラのヘッダを変更して、Arduinoの受信側のバッファを拡張する事で、どうにかクリアする事が出来た。
 ソレノイドを使用したハードウェアには、ナットを使用しているが、数日間の展示では、緩む事も多々あり、メカニカルな機構での改善が必要と言える。
 また、単管による構造物は、当然の事ながら、一人では制作が出来ないため、今回も数人掛かりで制作した。
 複合的な表現を行う場合、舞台でも展示でも、最も大切なのは、チームワークであると言える。
< 第四章 >
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 この作品は、上演していない時間の無愛想さを無くすため、クワイエットモードとして、LEDが展示室内をゆっくり動き、激しい動きをしない映像を流す方法を採った。これにより、プレイモードの映像を3種類、クワイエットモードの映像を3種類制作し、3台のコンピュータとMaxMSPを主体にしたシステムで映像を表示した。
 但し、実際には、サブ用パソコンのスペックが悪く、MaxMSPのPatchを使用してのFull HDによる投影が出来なかったため、メディア・プレーヤーをTelnet上からコントロールする方法を取らざるを得なかった。
 映像は、各地で撮影した正距円筒図法による風景写真を球体にマッピングしたオブジェクトが、3Dで大胆に動くものを制作し、更に、プロペラ状の無数のオブジェクトが、雪の様に降り注ぐイメージの映像をProcessingでコードを書いて制作した。
 また、Processingで、サブ用パソコンとネゴシを行うコードを書き、MaxMSPからProcessingにコマンドを送る方法で、メディア・プレーヤーを操作する事で何とか同期を実現した。
 LEDのコントロールにはArduinoを使用したが、Arduinoには、今回の気象データを格納出来るだけの充分なメモリが実装されていないため、フラッシュメモリ側にデータを格納した。なお、フラッシュメモリ側のデータはアドレスを指定して読み込むので注意が必要です。
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