展示作品について

第一章
「透明だった時間(とき)を回顧するための譚詩曲(うた)」
環境省レッドリストを使用した、多チャンネル音響インスタレーション
先日、知り合いの娘さんが、「近所の川で、カワウソを見ました。」と言った。耳を疑う事無く、「それは、ヌートリアでは無いの?」、と答えた。
が、本当に、カワウソであったのかも知れない。
きっと、そうだ・・・
きっと・・・
日本カワウソであって欲しい。
ごく初期において、この作品のイメージは、ハイブリッドな生物であったのだが、近年、現代華道作品を見る機会が多かった事も有り、少々、華道的な思いも何処かにあるのかも知れない。
レッドデータブックに載ってしまった生物達の名前を、コンピュータが読み上げる方法で制作しているが、人と人以外の生物達との関係性を考えるための作品なのかも知れない。

第二章
「宇宙(そら)より来たる微細(ちいさ)な者達への賛歌(うた)」
スーパーカミオカンデで捕捉したニュートリノのデータを可聴化した作品
一昨年、名古屋市科学館で開催されたコンサートの際、可聴化した音源を利用しつつ、地球上のみならず、宇宙も含めて、もう少し大きな自然との関係性を見つめてみようと言う観点から制作した。
テープを巻いたキューブは、舞台作品を上演した際に、地球を投影するために考えたもので、今回も、藤田君が中心になってオブジェクトの制作をしてくれた。
映像は、デザインの関口先生に、カミオカンデのデータから制作していただいたものです。

第三章
「生物に憧憬(あこがれ)の念を抱く者達の騒がしき舞曲(うた)」
機械式音具楽団による、株価チャートを活用した楽曲の演奏
最近、「AI」と言う文字を見掛けない日が無い程に、世の中、AIが社会の様々な領域に入り込んでいる。
「ビッグデータ」も、そうで、「ビッグデータ」の解析が出来るのは、AIであって、けっして、人では無いのである。
辛うじて、AIが吐き出した結果を参考にさせて貰っているのが人で、ひょっとして、AIの仲間内では、愚かな人々の事を、AI言葉なる方言で、語り合っているのかも知れない。
そうした、人が育んで来た社会と言うものが、自然の産物として「自然」なのであるのか・・・
ドラム缶は、化石燃料の象徴として使用しているが、瀬戸芸の開会式でも使用したものである。

第四章
「暖かい空間(そら)に白い虫が舞う時間(とき)を想う牧歌(うた)」
2017年の日本各地の気象データを可聴化したハイブリッド・アート
「地球温暖化」と言う言葉も、随分、軽くなってしまった印象があるのは、私だけであろうか。
「アメリカ・ファースト」に象徴されるように、今、人は、生きる事に精一杯なのかも知れない。
ただ、少しは、人のみならず、様々な生物、物、・・・、森羅万象に耳を傾けても良いのかも知れない。
昨年、一年間の、那覇から札幌まで、8都市の気象データを可聴化し、気温に付いてはLEDを使用して温度計のように作ってみた。
使用した映像は各地で撮影したものを、Processingでプログラミングして編集し、後半では風力発電のプロペラが、まるで雪のように降って来るイメージに仕上げてみた。